無欲というと
何も求めないことのように見える
何も持たず
何も欲しがらず
何にも心を動かされないことのようにも見える
けれど
本当に軽いのは
何もいらない状態ではなく
なくなっても大丈夫だと思える状態なのかもしれない
持つこと自体が重さになるわけではない
手に入れたものを使うこともできる
大切にすることもできる
守ろうとすることもある
ただ
それがなくなるたびに自分まで揺れるのなら
持っているようでいて
持たれているのかもしれない
失うことが怖いのは
物そのものが惜しいからというより
それがなくなったあとの自分を
どこかで支えられないと思っているからかもしれない
なくなったら困る
なくなったら苦しい
なくなったらもう戻れない
そう思うほど
心はまだ来ていない先のことまで抱え込み
今ここにあるものを静かに見られなくなる
なくなっても大丈夫という感覚には
冷たさがない
投げやりでもない
どうでもいいから手放すのではなく
なくなったとしても
またその時にどうにかすればいいと思える余白がある
また必要になれば
また働けばいい
また作ればいい
また出会えばいい
そう思えると
今ここにあるものを
必要以上に強く握らなくてすむ
握らないからといって
粗末にしているわけではない
むしろ
強く握りしめているときよりも
今あるものをそのまま大切にできることもある
いつかなくなるものを
なくならないもののように扱おうとすると
心には無理がかかる
なくなるものはなくなる
変わるものは変わる
離れるものは離れる
その当たり前に少し触れられたとき
心は少しだけ軽くなる
無欲とは
何もいらないことではなく
なくなることに怯えすぎないことなのかもしれない
持ちながら
握りしめない
今日は
なくなっても大丈夫だと思えるときの
その軽さを
ただ観ていた
