人は
地位や名誉や財産のような
より多く持つものに惹かれやすい
比べて
焦って
不足を感じて
さらに多くを求めていく
けれど
静けさのほうへ少しずつ重心が移ると
憧れる方向そのものが変わってくる
多く持つことではなく
何も持たなくても揺れないこと
競争しないこと
握りしめないこと
増やさなくても足りること
そこに近づいたとき
不安や焦りや満たされない気持ちは
思っていたより多く
持ちすぎることから生まれていたのかもしれないと静観した
多く持つ者に憧れていた
人は
多く持つ者に目を向けやすい
お金
立場
評価
知識
影響力
それらを持っている人を見ると
自分にもそれが必要な気がしてくる
比べてしまう
遅れているように感じる
いまのままでは足りないと思う
すると
もっと増やしたくなる
もっと認められたい
もっと満たされたい
もっと上へ行きたい
そうやって
持つことが生きることの中心になっていく
けれど
そこで得られる安心は長くは続かない
少し満たされても
また次が必要になる
持てば終わるのではなく
持つほど
失いたくないものが増えていく
比較と競争の中で落ち着けなかった
多く持ちたいという動きの中には
比較がある
自分だけを見ているつもりでも
どこかで他人を見ている
地位・名誉・財産・評価・承認・所有・快楽…
誰が上か
誰が多いか
誰が先にいるか
比べることで
いまの自分の位置を確かめようとする
けれど
その確認に終わりはない
上には上があり
足りなさは何度でも出てくる
だから
競争の中にいるかぎり
落ち着くことがない
勝っても不安が残る
負ければ焦りが残る
比べることそのものが
静けさを遠ざけていく
求めることが悪いのではなく
比較の中で求め続けると
心は休まらない
何も持たないほうへ憧れが変わった
けれど
静けさを少し知ると
憧れる方向が変わってくる
多く持つ人ではなく
少なくても揺れない人に目が向く
奪わなくてもいい人
競争しなくても静かな人
失うことを前提にしながら
必要以上に握りしめていない人
そういう在り方のほうが
深く自由に見えてくる
何も持たないとは
本当に何もないことではなく
持っていても
それに縛られないことなのかもしれない
増やさないと不安になる生き方より
なくなっても崩れない生き方のほうが
静かで強い
その静けさに触れると
多く持つことへの憧れが少し弱まる
代わりに
何も足さなくても足りる感覚のほうへ
心が向いていく
競争しないところに自由があった
競争しないことは
遅れることでも
負けることでもなかった
むしろ
いつも誰かと比べて
何かを証明しようとしていた緊張から
降りることだった
競争の外に出ると
日々の不安や焦りが
思っていたより静かになる
満たされない感じも
追い続けることで強くなっていたのだと見えてくる
もっと
もっと
と動き続けることで
足りなさは消えるどころか
育っていたのかもしれない
持たなくてもいい
勝たなくてもいい
証明しなくてもいい
そう見えてきたとき
ようやく少し自由になる
外側の条件が完璧になったからではなく
握りしめる力が弱まったから
静かになれる
その自由は
派手ではない
ただ
競争しないでいられるというだけのことかもしれない
けれど
その静けさは
地位や名誉や財産とは別のところで
たしかに深い
何も持たないほうへ…
ゼロニュートラル